<からだの深くにある「やわらかさ」- ファシアに触れるセルフケアのまなざし>
私たちのからだは、想像以上に「つながり」でできています。
筋肉や骨、内臓や神経。そのすべてが、独立して存在しているわけではなく、
実はある「膜構造」によって包まれ、つながれ、支えられています。
それが「ファシア(結合組織)」と呼ばれるものです。
ファシアは、筋膜(きんまく)とも総称で呼ばれることがありますが、
実際には筋肉だけでなく、骨や内臓、血管、神経までをも包み込み、
全身をくまなく結びつけている「からだのネットワーク」のような存在です。
ちょうど、果物を包む薄い繊維質のようなものが、
全身に広がっているようなイメージです。
YOGATOでは、筋筋膜の連鎖、トリガーポイント、経絡やつぼなど、
さまざまな観点からセルフケアを行っていますが、
その根底にはいつも、この「ファシアへのやさしいまなざし」があります。
たとえば、肩が重いと感じるとき。
腰に違和感があるとき。
多くの人は、「そこをぐっと押す」「ぐいっと伸ばす」といった、
強い刺激に頼りたくなります。
けれども、ファシアの性質からみると、そうした強い刺激は、
むしろ緊張や収縮を引き起こしてしまうことがあります。
ファシアは、やさしく、ゆっくりとした刺激に反応する、繊細で敏感な組織です。
無理にこじ開けるのではなく、「ほどけるのを待つ」ような接し方が大切なのです。
たとえば、ミルフィーユの層をそっとずらすように。
絡まった毛糸を、ひとつひとつほぐすように。
ファシアに触れるときのセルフケアは、まさに“関わり方そのもの”が問われます。
その意味で、YOGATOで大切にしているのは「観察」と「呼吸」、そして「待つ」こと。
からだの声を聴きながら、少しずつ触れていく。
「もっと深くへ」と焦らずに、今あるところに、やさしく留まる。
すると、ファシアは少しずつ“内側からほどけるように”動き始めます。
そして、もうひとつ見落とされがちなのが、「内臓」の存在です。
内臓もまた、ファシアに包まれ、
吊られるようにしてお腹の中に位置しています。
日常の疲れ、長時間の座位、不規則な生活やストレスなどによって、
内臓が本来の位置から下がったり、偏ったりすると、
その周囲の筋肉や筋膜にも負担がかかり、
腰痛や姿勢の歪み、冷えやむくみといった不調につながっていきます。
だからこそ、YOGATOでは「内臓調整」のセルフケアも丁寧に行っています。
位置を持ち上げたらやさしくそのままでいる、
上へと“戻すように”意識を向けていく。
ただゆっくりと呼吸を続けて留まる。
そんな小さな関わりが、驚くほど大きな変化を生み出すことがあります。
からだの深くにある内臓に働きかけることで、その周囲のファシアもゆるみ、
筋肉の動きも自然と軽く、しなやかに変わっていきます。
ファシアには、「感覚受容器(センサー)」も多く存在しています。
つまり、私たちが「感じる」こと・・・
痛み、圧、あたたかさ、安心は、
このファシアを通じて脳に届けられていると言われるのです。
だからこそ、セルフケアは“ただのストレッチ”ではありません。
セルフケアは自分自身との対話であり、
触れるという行為を通して、自分の内側と再びつながる時間です。
からだは、驚くほどやさしい関わりを受け取っています。
本当は、そんなに強く押したり、叩いたりしなくてもよいのです。
やわらかく、やさしく。
「わたしはここにいるよ」と語りかけるように。
YOGATOでは、「ファシア」を通して、からだの“水のような”側面を大切にしています。
ときに揺れ、ときに流れ、そして必要なときにとどまる。
その流動性の中に、私たちは自然と呼吸を深め、安心へと向かっていきます。
からだがゆるめば、こころも少しずつほどけてくる。
その逆もまた、同じです。
だから、今日もひととき。
やさしい手を添えながら、じっくりと“内なるやわらかさ”に触れていきましょう。
あなた自身を、ひとつの「つながり」として、まるごと愛おしむように。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。