<セツバンダアーサナ ― ゆだねることで見えてくる、わたしの今>
セツバンダアーサナ(橋のポーズ)は、
様々なヨガのクラスでもよく登場するポーズのひとつ。
とくに肩こりや腰の不調にやさしく働きかける動きとして、親しまれています。
YOGATOのクリパルジェントルのクラスでは、このポーズを行うときに、
「お尻を持ち上げると同時に、腕も天井方向へゆっくり上げていく」
という動きをよく取り入れています。
これは、いつものセツバンダアーサナに、
もう一層の「意識のレイヤー」を加えるための工夫です。
骨盤と腕――どちらも胴体と四肢をつなぐ部位ですが、
動きの方向性や働きは異なります。
それらを同時に動かすことで、からだ全体の連動性やバランス感覚が引き出され、
ふだん意識の届きにくい小さな感覚にも、そっと光が当たるのです。
ヨガニドラやマインドフルネスに非常に近い手法だと思います。
腕を上げるとき、肩や背中の感覚がどう変化するか。
骨盤が床から離れるとき、
足裏の力のかかり方がどんなふうに変わるか。
呼吸がどこを通っているのか――
そういった一瞬一瞬の変化を、まるで“見届けるように”感じていくこと。
そこには、クリパルヨガが大切にしている
「内観」のエッセンスが深く息づいています。
また、こんなふうにお伝えすることもあります。
「月と太陽」「地球と太陽」「地球とじぶん」。
腕の動きを通して、自分の“ひろがり”を感じる。
骨盤の動きを通して、自分の“根ざし”を感じる。
そして、空と大地のあいだで呼吸する“今のわたし”に気づいていく――
これは、ポーズを超えたヨガの時間。
私たちが『自然の一部』として「いま、ここ」にあることを、
静かに思い出していくプロセスでもあります。
そして何より、YOGATOでお伝えしているセツバンダアーサナのアプローチは、
よく知られている力強く持ち上げるスタイルとは、
ある意味で真逆ともいえるものです。
持ち上げようとがんばるよりも――
「いまのわたしが、どこまで自然に上がっていくのかを見届ける」。
力を入れるよりも――
「手放して、委ねてみる」。
自分の内側に問いかけながら動いていく中で、
からだが自然と選ぶ“高さ”や“バランス”に、そっと気づいていきます。
この気づきは、人それぞれ。どれもが正解です。
「もっと上げたくなる人」もいれば、
「今日のわたしは、これくらいでちょうどいい」と感じる人もいる。
その感覚は、すべてが“自分だけのヨガ”のかたち。
周りと比べたり、以前の自分と比べたりする必要はありません。
ただ、今日のわたしが感じているものを、そのまま大切にすること。
セツバンダアーサナは、見た目にはシンプルなポーズですが、
その内側には、深い静けさと、豊かな気づきの旅が広がっています。
呼吸とともに、ゆっくり腕を上げて、骨盤を持ち上げていく。
そして、同じリズムでおろしていく。
そのたびに少しずつ、自分自身の“いま”が見えてくる。
こうして動きを通して、自分と再び出会いなおす時間――
それこそが、クリパルヨガのジェントルクラスで過ごす大切なひとときです。
この静かな旅路に、今日もともにいてくださる皆さんへ。
そして、いつも丁寧にご自身と向き合ってくださる皆さんへ。
こころから、ありがとうございます。