<前腿が伸びないのは、腿のせいじゃない?>

<前腿が伸びないのは、腿のせいじゃない?>

「YIN YANG 60」、陰陽ヨガの時間に

「半サドルポーズ(前腿のストレッチポーズ)」を行いました。

このポーズは、春に巡りを整えたい「肝経」、

そして土用に関連する「胃・脾の経絡」にアプローチするポーズです。

半サドルポーズ(片脚の前腿を伸ばす形)、

両脚のサドルポーズなど、陰ヨガではよく登場します。

けれども、誰もが自然に無理なく取れるわけではありません。

むしろ「これ、できません……」と感じる方も多いのではないでしょうか?

私自身ができない身体でした。

数年前まで両脚のサドルポーズができませんでした。

大嫌いだったポーズのひとつです。

形を取れても、途中で腰に違和感が出たり、

前腿が張って後ろに倒れるのが怖く感じたり。。。

ですが、時間をかけてからだの緊張がほどけてくるにつれ、

呼吸とともに“自分のエッジ”を感じ取ることができるようになり、

いつの間にかこのポーズでの

「自分のエッジ」に入れるようになっていました。

今日はこの「前腿を伸ばす」現象の奥にあるもの、

そしてその柔軟性を深めるためのヒントをお話ししてみたいと思います。

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●鍵は「腿」ではなく「お腹」にある?

前腿を伸ばしたいとき、つい「腿を引っ張ろう」と意識してしまいます。

けれども実は、腿をゆるめる鍵は“お腹”にあるかもしれません。

私たちのからだは、筋膜という

薄いシーツのような膜で全身が包まれ、つながっています。

その中でも「深前線(Deep Front Line)」と呼ばれる筋膜のつながりは、

足裏から始まり、内腿・骨盤底・大腰筋・横隔膜・首・舌にまで続くインナーのラインです。

このラインの要が「大腰筋(だいようきん)」。

骨盤の奥から腰椎を通り、大腿骨の内側につく筋肉で、

姿勢の安定や股関節の自由な動きに深く関わっています。

この大腰筋がこわばると、前腿の伸びも制限されてしまいます。

「前腿をマッサージしても、ストレッチしても、全然変わらない……」

という声を聞くことがあります。

それは、腿そのものよりも、大腰筋・・・

つまり「お腹のこわばり」が原因であることが多いのです。

「太ももの筋膜リリースの効果を引き出すには
お腹の状態がかなめになってくる」

変化がなかなか出ない場合、お腹をほぐすことが近道でもあるのです。

横隔膜と呼吸がゆるむと、前腿も伸びていく

では、大腰筋がなぜこわばってしまうのか?

その大きな要因が「横隔膜の緊張」にあります。

呼吸が浅くなると、横隔膜が自由に動けなくなり、

連動して大腰筋も固まりやすくなります。

無意識のうちに、体幹の深い部分にある緊張が続いているのです。

だからこそ、「前腿を伸ばす」ためには、まず“お腹”をゆるめること。

もっと言えば、「呼吸」を深めてリラックスすることが大切になります。

●柔軟性は「緊張していないこと」で変わる

もうひとつ、見落とされがちな大切な視点があります。

それは、リラックスしているかどうかで

柔軟性が大きく変わる、ということ。

筋肉や筋膜は、自分を守ろうとするときにこわばります。

痛みや怪我だけでなく、日々のストレスやプレッシャー、焦りや不安……。

現代人のからだは、気づかぬうちに多くの緊張を抱えています。

たとえば、旅行に出て温泉に入ったとき。「ふ〜……」と息が抜けて、

「あれ、からだが軽い?」と感じた経験はありませんか?

あれは、現実からほんの少し距離を取ったことで、

無意識の緊張が解けた瞬間です。

ヨガのポーズが深まるのも、頑張ったからではなく、

「何もしないことを許した」からかもしれません。

サドルポーズを深めるヒント

サドルポーズを無理なく深めていくために大切なのは、

形を完璧にすることではありません。

自分の「呼吸が流れる場所」を探すこと。ポーズを最大限深めつつ

ずっといられる場所はどこなのだろうか?

それが“エッジを探る”ということです。

腰が反りすぎるなら、腰の下にクッションを入れてみる

背中と頭にブロックを置いて高さを調整する

膝が気になる場合は、太腿の下にタオルを敷く

仰向けになる前に、肘をついた姿勢から始めてみる

背中が床に降りていなくても、呼吸ができていれば大丈夫。

どんな形でも構いません。

呼吸がスムーズに流れ、安全で心地よいこと。

それが、あなたにとってのポーズの“完成形”です。

陰ヨガのアプローチは、どこかクリパルヨガと似ています。

自分の内側を丁寧に観ていく、静かで味わい深い豊かな時間です。

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春に訪れる、自分へのまなざし

春は「肝」の季節。気の巡りが滞ると、

イライラしたり、からだに張りを感じたりしやすくなります。

サドルポーズのように、前腿をゆるめるポーズは肝経だけでなく、

土用や季節の変わり目に意識したい

「胃・脾」の経絡にもアプローチできます。

季節の変化に寄り添うように、からだをゆるめ、心をほどいていく。

そんなひとときが、春の揺らぎに優しく寄り添ってくれる。

自分のペースで、自分のからだの声を聴きながら。

今日もまた、深呼吸とともに歩んでまいりましょう。

そして、YOGATOのセルフケアで毎回丁寧に行っている、

横隔膜ほぐしやお腹まわりをゆるめるアプローチ、

これらは前腿の緊張をほどくことにも、しっかりつながっています。

呼吸が深まると、からだもふっとやわらかくなっていく。

そうしていたら、自分も、周りも。

きっと自然に笑顔が増えると思います。

そんな感覚を、ぜひ日々の中で味わってみてください。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

※追記

上記の以前書いたアーカイブコラムも今回の内容に繋がります。

お時間が合えばぜひ読んでみてください。

サドルポーズは、、腰痛改善のポーズとしてよく紹介されます。

でもできない。。。ももほぐしは辛いねん。。

そう思っていた昔の私。「当時、知りたかったなー」という内容です。