<プレスポイントの活用で、運動量を微調整できる理由 – 筋肉の中にある小さなセンサー>
クリパルヨガのアーサナにおいて、
「がんばりすぎないけれど、丁寧に自分を使う」ことを大切にしています。
ただ、力を抜くだけでは本当の意味での“安全”にはなりません。
どこかを抜きすぎて、どこかに過剰に負担がかかっていると、
身体はやがて悲鳴をあげてしまうからです。「安全にしっかりと使える身体」が大切です。
そんなとき、私たちが活用するのが「プレスポイント」というアーサナテクニックです。
簡単に言えば、身体のある一点に意識的に“押す”方向性を加えることで、
筋肉と骨格の位置を調整しながらポーズ全体を安定させる方法です。
たとえば、コブラのポーズ(ブジャンガーサナ)では、、、
恥骨をマットにそっと押し下げる。
下腹部や前腿も床を静かに抑えるように使う。
胸は前へ、足先はうしろへ、そして頭頂は天井の方へと、
全方向に向かってからだを支える意識を持ちます。
このように、身体の中心から放射状にプレスポイントを使うことで、
反る力を腰だけに頼らず、前面・背面・上下のバランスが整い、
全身がつながった安定感を感じることができます。
不思議なことに、「プレスポイント」を丁寧に行うと、
運動量がぐっと増したように感じられることがあります。
静かにポーズを保っているだけなのに、汗がじんわりと出てきたり、
呼吸が深くなったり。実際に体を支える筋肉たちがしっかりと働き出すからです。
では、なぜプレスポイントを意識するだけで、
筋肉の出力が高まるのでしょうか?
鍵となるのは「筋紡錘(きんぼうすい)」という
筋肉の中にある小さなセンサーの存在です。
筋紡錘は、筋肉の長さや変化を感知して、
必要なタイミングで筋肉の収縮を促す働きを持っています。
私たちが無意識にバランスをとったり、
力を入れたりできるのは、このセンサーの働きがあるからこそ。
けれども、関節の位置がずれていたり、姿勢が崩れていたりすると、
筋紡錘はうまく働きません。
本来発揮されるはずの筋力が出し切れず、
力が入りにくくなったり、逆にどこかの筋肉が頑張りすぎたりしてしまいます。
プレスポイントを用いて身体を「ちょうどよい配置」に整えると、
関節が安定し、筋紡錘が正しく機能しやすくなります。
その結果、必要な筋肉にしっかりとスイッチが入り、
無理なく、でもしっかりと支えることができるようになるのです。
これは、スポーツ科学の分野でも
「神経筋コントロール(neuromuscular control)」という概念で説明されています。
関節の位置情報が明確になると、脳からの指令がスムーズに筋肉へ伝わり、
効率的に身体を動かせるようになる、というものです。
クリパルヨガでいう
「ポーズが決まる」「軸が通る」という感覚も、まさにこの状態。
プレスポイントでアーサナを整えることで、
内側から湧き上がるような力強さを感じるのは、
筋肉が無理なく、でもしっかりと活性化している証拠なのです。
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そしてもうひとつ、「プレスポイント」を使った整えは、
「どこも使いすぎず、どこもさぼらせない」絶妙なバランスに導いてくれます。
ある部分だけに頼らず、全身で動くことができるようになるから、
微調整ができるようになります。そうすると、
結果的にアーサナ全体の運動量がアップするのです。
「どこもさぼらせない」・・・意外と気がつきにくい視点です。
観察してみてください。
どこか一部分だけに意識が偏ってしまったり、
どこかが頑張りすぎて痛みが出てしまった経験は、
誰にでもあるかもしれません。そんなときこそ、
プレスポイントで「ちょうどよく使う」ことを学ぶことで、
からだの内側から整う感覚に気づけるようになります。
身体が大きくても、小さくても、それは関係ありません。
自分の持っている骨格や筋肉、今あるこのからだ全体の中で、
ちょうどいい使い方を見つけていくこと。
それが、アーサナのなかで本当に大切なことだと思うのです。
静かにポーズを保ちながら、意識を前へ、後ろへ、上へ、下へと広げていくと、
ふと気づくことがあります。
「ああ、これが自分の力なんだ」。
無理に頑張るのではなく、でもしっかりと力がある。
そんな感覚が、内側からじんわりと立ち上がってくるのです。
この感覚は、人それぞれ。
比べられないからこそ、大切にできる。
今の自分の中にある「ちょうどよさ」や「力強さ」を感じることが、
プレスポイントを使ったアーサナの中で、
少しずつ見えてくるのだと思います。
アーサナをとっているその時どきの微調整、、、
どうぞ楽しんでくださいね。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。