やさしさが引き出す、からだの変化
肩、凝っていませんか。
そんなとき、つい強めのストレッチで何とかしようとしていませんか。
からだの中で「硬さ」や「凝り」があるとき、
その状態は硬いハードタイプのゴムに似ています。
ハードゴムをぐいっと伸ばすと、一瞬は伸びても「ギュンッ」と強く戻ります。
それはゴムの弾性が高く、伸びた分だけ強く縮もうとするからです。
筋肉と筋膜はハードゴムに似ている
筋肉や筋膜も、このハードゴムとよく似た性質を持っています。
筋肉は細い繊維状の組織が束になってできており、
その表面や間を包む筋膜が形を保っています。
筋膜にはコラーゲン線維が多く含まれ、一定の柔軟性を持ちながらも、
硬くなると「縮もうとする力」が強く働きます。
さらに、神経がその状態を「守るべき」と判断すると、
筋肉は無意識に緊張を続けてしまいます。
強いストレッチが逆効果になる理由
硬くこわばった肩や首の筋肉は、まさにこのハードゴムの状態。
そこに強いストレッチを加えると、
伸びるどころか「もっと守らなきゃ」と反射的に力を入れ、
結果としてさらに硬くなることがあります。
これは「伸張反射」と呼ばれ、急な伸びや過度な負荷から
筋肉を守るために備わっている防御反応です。
一方で、柔らかいソフトタイプのゴムは、伸ばすとゆっくり優しく戻ります。
弾性の戻りが穏やかで、伸びた状態をからだが受け入れやすい状態に近いと
考えるとわかりやすいでしょう。
筋肉や筋膜も、温度が上がり、血流が整い、
神経の緊張が解けると、このソフトゴムのような反応になります。
やさしく解きほぐすアプローチ
では、硬くなっているときにどうすればよいのでしょうか。
答えは「急がず、まずやさしく解くこと」です。
手足の末端や肘下など、肩や首から少し離れた部位をやさしくほぐすだけでも、
筋膜を介して肩の緊張は和らぎます。
また、深い呼吸で横隔膜をゆるめることや、ゆっくりと関節を回す動きも、
自律神経を落ち着かせ、筋肉が「守らなくても大丈夫」と感じる土台をつくります。
筋肉は、外からの力で無理やり変えるよりも、
「自分からゆるもう」と思える状態になるときに、いちばん自然に伸びてくれます。
それはストレッチだけでなく、日常の姿勢や呼吸の質にも深く関わっています。
ちょうどいいやわらかさを見つける
もし、あなたがずっと肩こりや首こりに悩んでいるのなら
8割…いえ、それよりも少ない、
6〜7割くらいの「気持ちいいな〜」と感じる伸びで十分です。
それは数字で決めるためではなく、
自分のからだを尊重する「やさしさ」を形にする目安です。
なぜなら、硬くこわばった筋肉や筋膜は、
ハードゴムのように無理に伸ばすと反射的に縮もうとするからです。
まずは血流と神経の緊張をやさしく解き、
ソフトゴムのような柔らかさを取り戻すこと。
それが、肩や首を長く楽にしていく近道なのです。
クリパルヨガのアプローチ
実はこの考え方は、
YOGATOの『クリパルヨガ』のクラスでは、ごく自然に行われています。
いきなり最大限まで伸ばさず、
観察しながら「ちょうどいい」と感じるところで留まるーー
それは完成形を目指すのではなく、
その過程で起きる変化を味わうことと共通しています。
やさしさが、からだの変化を引き出し、
長く続く心地よさへとつながっていきます。
からだは、整う準備ができれば、自然にその方向へ動き出します。
私たちができるのは、そのきっかけをやさしく差し出すこと。
今日の自分にとって
「ちょうどいいやわらかさ」を見つけていきましょう。