<仙骨と背骨をめぐる——督脈と浅後線の交わるところ>

<仙骨と背骨をめぐる——督脈と浅後線の交わるところ>

仙骨は、からだの奥で静かに呼吸をしています。

ほんの数ミリほどの、ゆるやかな揺らぎ。

その動きが、背骨を通して全身へと波のように広がっていきます。


東洋医学では、この中央の流れを「督脈(とくみゃく)」と呼び、

生命力を司る“腎精(じんせい)”と深く関わる経脈であり、

全身のエネルギーの流れをまとめる“司令塔”のような働きを持つのが、督脈です。

背骨を通るこのラインが整うと、

からだ全体の気の流れがひとつに結び直され、自然と呼吸も深まっていきます。

仙骨の奥には、いのちの根のような力が宿っています。

そこから尾骨を経て、背骨の一本一本を伝い、

胸をひらき、項(うなじ)を抜け、頭頂へと気が昇っていく。

この上昇の流れこそが、わたしたちが“立ち上がる力”を取り戻す道筋です。

日々、どれだけ眠っても疲れが抜けない——よく聞きます。

20代後半から、ヨガを本気で生活に取り入れる前までの私、、、まさにそうでした。

寝ても寝ても、朝には重だるさが残っていて、

心もからだも“休んだ気がしない”感覚。

今になって思うのは、

あのころの私は「気の流れ」が滞っていたのだということ。


とくに、背骨を貫く“督脈”、そして“膀胱経”“腎経”のバランスが乱れると、

いくら眠っても本当の回復にはつながりません。

からだの奥でエネルギーが循環しはじめると、

同じ睡眠時間でも目覚めがまるで違ってくる——

私はこの変化を、ヨガとセルフケア整体の実践を通して実感しました。

・   ・   ・


呼吸が深まるたびに、仙骨がわずかに動き、背面がひとつながりになっていく——

そんな感覚を味わったことがあるかもしれません。

筋膜の観点から見ると、

この督脈と響き合うのが「浅後線(せんごせん/Superficial Back Line)」です。


足裏からふくらはぎ、もも裏、仙骨、背中、うなじ、頭頂まで、

からだの後面をひと続きに結ぶように走るライン。

まるで督脈を包み込むように、背面の支持と伸びを担っています。

浅後線をゆるめることで、背骨の可動性が高まり、

督脈を流れる“気”がより自由にめぐるようになります。

つまり、背骨の中心を通る督脈と、その外側を覆う浅後線は、

「軸」と「支え」として互いを補い合う存在。


どちらかが固まると、もう一方の流れも滞ります。

たとえば足裏やハムストリングのこわばりは、

仙骨の呼吸を妨げ、結果的に頭頂までの気の上昇を弱めてしまう。

だからこそ、背面全体を“ひらく”ことが、

気と血、そして意識の通り道を整える第一歩になるのです。

・   ・   ・

ヨガの実践では、立位の前屈やダウンドッグ、やさしいツイストなどで、

浅後線をゆるやかに伸ばしながら、督脈の流れを感じてみるのもおすすめです。

大切なのは、形を深めることではなく、

仙骨から背骨に“呼吸が通う”感覚を味わうこと。


背面に静けさが生まれるとき、

その奥で確かに“いのちの流れ”が息づいていることに気づきます。

今日もどうぞ、背面をひらくように息をしてみてください。


仙骨から背骨へ、そして頭頂へ。

内をめぐる光が、静かに立ち上がっていくのを感じながら。

今日も最後まで、ありがとうございます。