<脚と呼吸をつなぐ – 横隔膜と“胃経”のめぐり>

<脚と呼吸をつなぐ – 横隔膜と“胃経”のめぐり>

呼吸が浅いと感じるとき、無理に胸を開こうとするよりも、

「脚」を感じることからはじめてみることもいいですね。


わたしたちの呼吸を支える横隔膜は、

実は脚や骨盤の筋肉と深くつながっています。

息が深まらないのは、胸や肋骨、上半身の問題だけではなく、

脚の緊張が呼吸の波を止めてしまうことも多いのです。

横隔膜のあたりには、「胃経(いけい)」という経絡が通っています。

その胃経は、目の下(承泣)から始まり、

胸・お腹を通って横隔膜を抜け、

骨盤の前側から太もも、膝、すねへと流れ、

最後は足の第二指、人差し指で終わります。


からだの“前面”を縦に走る一本の道。

それは、私たちが「感じて・動いて・生きる」流れそのものでもあるのではないかと感じます。

この経路の中でも、前もも(大腿前面)はとくに大切なポイントです。

立つ、歩く、動く——そんな毎日の中で、

前ももは常に“前に進もうとする力”を使っています。


けれど、がんばるほど前面が硬くなり、

骨盤は前に傾き、横隔膜が上へ引き上げられて、

呼吸が浅く、胸の奥が張るように感じることがあります。

今日のTrpYTでは、横隔膜ほぐしから異形を整え、

脚の前面をゆるめました。

脚を整えると、呼吸が下へ降りていくような感覚が生まれます。

それは、地に足をつける力と、息を通す力が再びつながる瞬間。

グラウディングが深まる感覚。


脚がやわらぐと、横隔膜は自然にのびのびと動きはじめ、

胸から腹へ、そして骨盤まで、呼吸がひと続きになります。

筋膜ラインの視点でも、からだの前面には

「浅前線(Superficial Front Line)」という一本のラインがあります。

それは、足の甲から前もも・お腹・胸・首を通り、顔までを結ぶ筋膜のつながり。

東洋の「胃経」と重なるように、

前面のめぐりを通して呼吸と姿勢を支えています。

このラインがやわらぐと、呼吸の深さと姿勢の軸が自然に整い、

内側に“前へ進む力”がやさしく戻ってくるのです。

東洋医学では、胃経の滞りは「消化の不調」だけでなく、

考えすぎや気持ちの詰まりにも関係すると言われます。

そして目を酷使することも経絡の始まりが目の下、、、ということから考えると、

前ももの硬さや、横隔膜の強張りに影響していることがつながりますね。


前ももが硬いとき、心もまた“がんばる方向”に偏りがち。

そんなときこそ、つながりを意識して脚をほぐして、呼吸を感じる。

それだけで、内側の空気が少し入れ替わるように、気持ちもやわらいでいきます。

脚が地を踏み、呼吸がひらくとき、

からだはひとつの大きな呼吸体として働きはじめます。

季節が冬へと向かうこの時期、
からだの前面にそっと手を添えて、呼吸を聴いてみてください。


脚の奥のあたたかさとともに、

横隔膜がゆるみ、息がめぐる——

その流れが、静けさを思い出させてくれますね。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。