<からだの変化を味方に、ゆらぎをやさしく整える – 冬に養う“戻す力”>
「冷える」という感覚には、いろいろな意味があります。
それは単に体温が下がるということではなく、
生きていることそのものの証のようにも感じます。
外の気温だけでなく、からだの中の巡り、
気持ちの流れ、呼吸の深さ——
それらが重なり合って、わたしたちの“温かさ”をつくっています。
今日のクラスで扱った「腰椎3番」と「腎」は、
まさにその巡りを支える中心にある場所でした。
ウェストライン(ウエスト)に手をあててみてください。
両手の親指が背中側で触れるあたり——それがだいたい腰椎3番〜4番の高さ。
おへそのちょうど裏側にある、とも言えます。
からだの軸をしなやかに保つ要のようなところ。
ここが固まると、下半身の冷えや腰の重だるさ、
あるいは心の緊張にも影響が及びます。
けれど、この部分がやわらかく動きはじめると、
呼吸は自然と下へと降り、
安心感や静かな落ち着きが戻ってきます。
東洋医学でいう「腎」は、腎臓そのものだけではありません。
生命エネルギーの源であり、「精(せい)」を蓄える場所。
成長や再生、老化のリズムを支える力そのものです。
だからこそ、更年期の頃に「腎」の働きがゆらぐのは、
とても自然なこと。
ホットフラッシュやのぼせ、上半身の汗、下半身の冷え・・・
それらは、エネルギーの流れが一方向に偏っているサインでもあります。
春や夏は、外へ、上へとひらいていく季節。
秋から冬へ向かう今は、反対に「内へ、下へ」と戻っていくときです。
外へ放っていたエネルギーを、自分の中に戻していく時期なのです。
冬のセルフケアは、この「戻す力」を養うことでもあります。
柔らかく、自然の流れで引き締まっていくように、
腰の奥やお腹の中に温もりを感じられるようにしてあげるのです。
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同じ“腎”を整えるといっても、季節によって少しずつアプローチは変わります。
たとえば6月の梅雨の頃は、湿気によって「水」が滞りやすく、
脚や足裏を通して余分な湿を流すケアが中心になります。
それに対して、秋から冬にかけては、
冷えや縮こまりから守るように、
背骨の奥に弾力を取り戻すような働きかけが大切です。
どちらも“腎”を助けるケアですが、
季節とともに、からだが求めている方向が変わっていくのです。
日常では、腰の後ろを軽く叩いてみたり、
腰椎3番のあたりに手のひらをあてて深呼吸するだけでも十分です。
手の温かさが骨の奥に届くように、
「ただ呼吸を通す」ことを意識してみてください。
整えよう、治そう、と力む必要はありません。
むしろ、何も変えようとせずに今の自分を見つめること。
それがいちばん深いセルフケアになります。
更年期のからだは、ゆらぎの中で新しいバランスを探している途中。
次の自分のあり方を見直す時期なのかもしれませんね。
冷えの中にも温かさがあり、閉じる中にも静かな再生の力が息づいています。
「腎」を整えることは、その内なる循環を信じて支えること。
それは、これからの季節をしなやかに生きるための、
大切な準備でもあります。
今日感じた「腰椎3番のやわらかさ」や「呼吸の深まり」を、
どうぞ日々の中にも少しずつ取り入れてみてください。
寒さが増していくこれからこそ、
自分の中の温もりとつながる時間を、やさしく育てていきましょう。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
