<前鋸筋から広がる“つながり” – 外側線・螺旋線・アームライン>

<前鋸筋から広がる“つながり” – 外側線・螺旋線・アームライン>

前鋸筋を意識して動かす。

できると思いますか?

……これ、できるようになるんです。

しかも、それは力を込めることでも、特別な動きをすることでもなくて。

ほんの少し、脇の下の奥に呼吸を通すだけで、

前鋸筋は静かに応えてくれます。

そのためにも、“前鋸筋”というひとつの部位だけで感じようとするのではなく、

そこから広がる「つながり」を知り、感じていくことが大切です。

筋肉は単独で動くのではなく、筋膜を通して全身が呼応しています。

昨日のクラスでは、横向きでの“前鋸筋ほぐし”を行いました。

脇の下に4本の指を差し込み、肋骨に沿って呼吸を感じる・・・

その小さなワークから、からだの内側に新しい通り道が生まれていきます。

今日は、その前鋸筋が“どんなラインの中で働いているのか”を見てみましょう。

筋肉は単独で動くわけではなく、筋膜を通して全身がつながっています。 

肩こりや腰痛といった局所的な不調も、 

この「ラインの関係性」を理解すると、見え方が少し変わってきます。 

・    ・    ・ 

まず、前鋸筋が属しているのが 外側線(ラテラル・ライン)。

からだの外側を足元から頭まで走るこのラインは、 

体側を伸ばすような 側屈の動きや、姿勢の安定を支えています。 

外腹斜筋や外ももにある大腿筋膜張筋など、からだの“外の壁”を形づくる筋群と連なり、 

からだの“横の支え”をつくる縦の柱のようなラインです。 

前鋸筋はその上部で外腹斜筋と手を取り合い、 胸郭と肩甲骨の橋渡し役として働きます。

次に関わるのが 螺旋線(スパイラル・ライン)。 

こちらは、からだをねじる・バランスを保つときに働く、 斜めのつながりを持ったラインです。 

右足の内側から反対側の外腹斜筋、前鋸筋、肩甲骨へと続き、

左右交差しながら全身を包み込むように走っています。 

前鋸筋は、反対側の外腹斜筋と“対角線上のペア”を組み、 

ねじりの動きや歩行時の連動をなめらかにする役割を担っています。 

そして3つ目が、腕線(アームライン)。

体幹から腕・手へとつながる4本の筋膜経線で、

前後(フロント・バック)と浅層・深層の4つに分かれています。

前鋸筋はその中でも、深層のフロント・アームラインに属し、

小胸筋や肋間筋を通して上腕の内側へとつながっています。

私たちが「手を伸ばす」「支える」「抱きしめる」といった動作をするとき、

前鋸筋は胸郭を静かに支えながら、

腕と呼吸の動きを同時に整えてくれているのです。

この深層のフロント・アームラインを見ていくと、

前鋸筋が肩こりと深く関わる理由が、自然と見えてきます。

腕だけを動かしているようでいて、

実は胸郭や呼吸の支えがその奥で働いている——

そんな全体のつながりの中で、肩は自由さを取り戻していくのです。

・    ・    ・ 

このように見ると、前鋸筋が単なる“肩の筋肉”ではなく、

体側・体幹・腕をつなぐハブのような存在であることがわかります。


肩が楽になるとき、実はその下で肋骨が広がり、

足元からの支えやねじりの流れまでが静かに整っている・・・

そんな全体の調和が起きているのです。

筋膜のラインを意識して動くことで、

私たちは“部分”ではなく“全体”としての自分に戻っていくことができます。

それは、ひとつの筋肉を超えて「からだ全体で呼吸する」感覚を取り戻すこと。

秋から冬へと季節が移り、空気の冷たさが深まるこの頃。

呼吸もまた、自然と内へと向かい、

静けさへと向かっていく。

前鋸筋を入り口に、肋骨や胸の奥までやさしく呼吸を通していくことで、

冷えがちな肩まわりや背中にも、温かいめぐりが広がっていきます。

今日も、からだの内側にあるその流れを感じながら、

やさしく、深く、息をしてみてください。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。