<肩の奥の自由をほどく – 前鋸筋に触れる時間>

<肩の奥の自由をほどく – 前鋸筋に触れる時間>

今日の「TrpYT 60〈腰痛肩こり〉」では、

これまでの脇下ほぐし(肩甲骨ほぐし)から一歩進んだ“前鋸筋アプローチ”を紹介しました。


横向きに寝転び、下の腕を安定させ、いつもの脇下ほぐしをすると、

届きにくかった部分がもう少し奥まで挟めるようになります。

そこからさらに一歩先へ。4本の指を揃えて脇の下へ差し込み、

呼吸とともにからだの奥へとやさしく探りを入れていく・・・

そんなセルフケア整体を行いました。


前鋸筋(ぜんきょきん)は、肋骨の外側から肩甲骨の内側(前面)へと斜めに走る筋肉で、

肩甲骨を前方へ滑らせたり、腕を前に押し出したりする動きを支えています。

たとえば、腕を前に伸ばす・手をつく・荷物を押す——そんなとき、

前鋸筋は肩甲骨を胸郭に安定させる「裏方」のような役割を担っています。

この筋肉がこわばると、肩甲骨は背中から浮きやすくなり、肩がすくみやすくなります。

反対にゆるみすぎると(脇から肩を引き下げることがしにくい状態)、

肩甲骨が背中に密着せず、腕を支える力が弱まります。


つまり前鋸筋は、「肩甲骨の安定と動きの自由」その両方を支える

“バランサー”のような存在なのです。

脇の下の奥には、前鋸筋だけでなく、

呼吸筋として働く肋間筋や横隔膜の動きも重なっています。
そのため、やさしく指先で探っていくと、

肩の動きと呼吸の波がつながっていくのが感じられます。

肩をほどくというより、呼吸の流れを取り戻していくような感覚です。

今回のワークでは、上になっている腕を上下に動かしながら、

指先が押し出されたり、筋肉が迎え入れるように動いたりする感覚を観察しました。

その瞬間、「ここだ」とからだが応えるように、

内側で息づく動きを感じ取れることがあります。

ポイントは、押すことでも強くほぐすことでもなく、「探る」こと。

“ここはどうかな”“呼吸は届いているかな”と問いかけるように、指先で確かめていく。


前鋸筋は胸郭や呼吸筋と隣り合う繊細な場所です。

だからこそ、触れるときはやさしく、ゆっくりと。

筋肉の奥にある呼吸の波を感じるように、待つようなタッチで向き合います。

実際に行うと、肩の重さがふっと抜けたり、胸が自然に開きやすくなったりします。

それは、肩甲骨が本来の軌道を取り戻し、呼吸と動きがひとつに戻っていくからです。

前鋸筋がゆるむと、肋骨の広がりにも大きく影響します。


お時間があればぜひ、この横向き前鋸筋ほぐしの後に、

ゆっくりと完全呼吸(ディルガ・プラーナヤーマ)をしてみてください。
吸う息で肋骨が外側へ、吐く息で静かに戻っていく——その波の中で、

今まで感じにくかった前鋸筋の存在を、

ふっと“そこにある”ように感じる方もいるかもしれません。

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前鋸筋を通して見えてくる“からだのつながり”は、

外側線や螺旋線など、筋膜のライン(アナトミートレイン)にも深く関係しています。

そのあたりは、明日のアーカイブコラムで少し詳しくお伝えしますね。


日々の動きの中で無意識に溜めていた緊張を、やさしくほどきながら。

自分のからだと仲良くする時間を過ごしていきましょう。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。