<呼吸を聴く——やさしいウジャイと、5つのプラーナヤーマ>

<呼吸を聴く——やさしいウジャイと、5つのプラーナヤーマ>

今日のクラスでは「呼吸法(プラーナヤーマ)」をテーマに、

これまで扱ってきた5つの呼吸法をひとつずつ確認しました。

自然呼吸で今の自分の呼吸を観察し、

ディルガ・プラーナヤーマ(三部呼吸・完全呼吸)で胸と肋骨、お腹へと呼吸を通す練習。

毎回のヨガの時間で行うこの完全呼吸は、呼吸の準備運動のような役割を持っています。

そしてそこに重ねる、喉の奥をやさしく細めて行うウジャイ呼吸。

短く強く吐き出すカパラバーティにクンバク呼吸。

最後に左右の鼻を交互に使うナディ・ショーダナ。

どれも、呼吸そのものを整えるよりも、

「今、呼吸がどんな状態にあるか」に気づいていくための時間です。

こうして振り返ってみると、

呼吸を観察するということは、


呼吸を“つくる”こととはまったく違うのだと感じます。

それをもっとも深く教えてくれるのが、

今日も行ったウジャイ呼吸です。

ウジャイ・プラーナヤーマは「勝利の呼吸」と訳され、

多くのヨガでは「熱を生む」「集中を高める」呼吸として知られています。

実際、ダイナミックに動くスタイルのヨガでは、

この呼吸が内側の火を燃やし、身体を力強く支える役割を果たしています。

私自身、クリパルヨガに出会い、じっくりと学ぶまでは、

ウジャイを“エネルギッシュな呼吸法”としてしか捉えていませんでした。

けれど、クリパルヨガで体験したウジャイは、

まったく異なる“質”の呼吸だったのです。

クリパルヨガでのウジャイは、

熱を生む技法というよりも、感覚を聴く瞑想的な呼吸として伝えられます。

喉の奥をほんのわずかに細め、空気が通る音をやさしく聴く。

その音は、海の波が寄せては返すような穏やかさを帯びています。

だからクリパルではこの呼吸を「海の音の呼吸(Ocean Breath)」と呼びます。

最初のうちは、音を出そうとして喉を締めすぎたり、

息を長く保とうとして力が入ったりもします。

けれど、次第にそれが違うとわかってきます。

ウジャイは「音を出す」のではなく「音を聴く」呼吸。

呼吸をコントロールするのではなく、

呼吸に導かれるようにして、からだの内側の波を感じていくのです。

その波はとても静かで、やさしい。

吸う息は海が寄せてくる音、吐く息は波が引いていく音。

そのリズムに心を預けていると、

思考のざわめきや感情の揺れが少しずつ鎮まり、

呼吸がひとつの「居場所」になっていきます。

解剖学的に見れば、

呼吸は横隔膜の上下運動や呼吸筋の働きによって成り立っています。

セルフケア整体でそれらをやわらげたり、

緊張した部分をゆるめることも大切なアプローチです。

動き方を知るということも大切な方法。

けれど、どんなに技法を学んでも、

いちばん深い気づきは「いま、何が起きているか」を感じ取るところにあります。

呼吸が深いと感じる日もあれば、浅いと感じる日もある。

それもただ「ああ、そうなんだな」と受け取るだけ。

感じることで、またそこから変化が始まっていくのですね。

クリパルヨガのウジャイは、

陽のような集中ではなく、陰の静けさの中にある集中を育てる呼吸。

勝利とは外に向かう力ではなく、

内側に調和を見いだすこと——心を静めること。

その“内なる勝利”こそが、クリパルヨガのウジャイの本質です。

ウジャイを行うたび、私は感じます。

どんなに外の波が荒れていても、

内側には静かな海があることを。

その海の音に耳を澄ませていると、

自然と呼吸が整い、心がひとつに戻っていくのです。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。