<春支度 – 広がる伸びる前に巡りを受け止める準備を>

春が近づくと、
からだの奥で、何かが静かに動き始めるのを感じることがあります。
外の空気は少しずつゆるみ、
光はやわらかくなり、「そろそろ動きたい」という気配が動き出す。

けれど同時に、
動きたい気持ちはあるのに、からだが追いつかない。
そんな重さや滞りを感じることも、

肌に違和感や痒みが現れることも春先にはよくあります。

五行で春は「木」にあたります。
木は、のびる力、広がる力、前へ進む力。

肝や胆のはたらきと深く関わり、
気や血の巡り、感情の流れにも影響します。
でも、「木」は単独では育たない。
しっかりと根を張り、のびやかに枝を広げるためには、
それを受け止める「土」が必要です。

土は、安定や消化吸収を司るだけでなく、
からだが安心して動きを受け止められる“居場所”のようなもの。
足もと、骨盤の奥、内臓の感覚、そして一定のリズム。

冬のあいだに、
冷えや疲れ、緊張を抱えたまま春を迎えると、
木のエネルギーだけが先走り、

巡りはかえって乱れやすく滞ります。

肩や首のこわばり、目の奥の疲れ、
理由のわからないイライラや落ち着かなさ。
胃腸の重さや、食欲の波。

それらの感覚は、「もっと動きなさいよ」という合図ではなく、
「受け止める土を、もう一度整えようよ」という
からだからのサインなのかもしれません。

春支度は、何かを頑張って足すことではありません。
先に、ゆるめること。
つなぎ目をひらくこと。
巡りが通れる余白を、静かにつくること。

朝、ほんの少しからだを動かす。
胸や体側、肋骨まわりに呼吸を通す。
前鋸筋や横隔膜がやわらぐと、
からだの前と後ろ、内と外が自然につながり、
木のエネルギーは無理なく巡り始めます。

食事も同じ。
春野菜のほのかな苦味は、
冬にため込んだものを流す手助けになりますが、
冷やしすぎないこと、詰め込みすぎないことも大切です。
土が落ち着いていてこそ、木はのびやかに働けます。

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春は、始まりの季節。でもその始まりは、
勢いよく飛び出すことではなく、
大地に足を預け、からだの内側に重心が戻るところから始まります。

この冬に整えてきた土台(土のエネルギー)は、
すでに、春を迎える準備を終えています。


あとは、急がず、押さず、
からだの巡りが自然にひらくのを待つだけ。

伸びる前に、受け止める。
動く前に、つながる。

そんな静かな春支度を、
この春も、からだと一緒に味わっていけますように。

今日も最後までありがとうございます。