<手首という入り口にぬくもりを- 原穴とこころをととのえる手首ケア>
夏が近づくころになると、気温が上がり、
からだも心も外へとひらいていく感覚が強くなります。
一方で、「寝つきが悪い」「動悸がする」「なんとなく落ち着かない」といった、
心の不安定さを感じやすい季節でもあります。
そんな夏の入り口に意識しておきたいのが、“心”のケア。
そして、そのために大切にしたいのが、手首にある「原穴(げんけつ)」たちです。
原穴とは、それぞれの臓腑のエネルギーが出入りする“玄関”のようなツボ。
たとえば、肺の原穴は「太淵(たいえん)」、腎は「太渓(たいけい)」、
手首であれば、
「心経」ー神門(しんもん)
「小腸経」ー陽谷(ようこく)
「肺経」ー太淵(たいえん)
「心包経」ー大陵(だいりょう)、、、たくさんあります。
多くの原穴が、手首や足首といった“関節まわり”に集まっているのが特徴です。
関節は、東洋医学では“気の出入り口”ともされていて、
外界とのつながり、そして体内の巡りのハブのような場所。
だからこそ、原穴をやさしくあたためることは、
全身の調整だけでなく、心の安定にもつながるのです。
特に手首に集まる原穴は心に効くツボが多いことが特徴です。
●心に影響する手首の原穴
①夏の経絡のひとつ「心経」ー神門(しんもん)
手首の小指側にある「神門(しんもん)」というツボです。
手首の内側すぐ下の、小指側のくぼみ。
神門は、心を落ち着けるツボとして有名で、
不眠や不安、焦燥感に効果的とされます。
②「心包経」ー大陵(だいりょう)
もうひとつは心を守る働きをもつ「心包経」の原穴が「大陵(だいりょう)」。
手のひら側、手首の中央にあります。二つの筋の真ん中です。
ここもまた、ストレスや胸のつまり感に対してやさしい作用をもたらします。
(「心包経」の詳しい解説はまた後日の」コラムで。
「こころを守る経絡」と呼ばれます。各季節に影響する経絡とはまた別の場所。)
この季節、手首がじんわり汗ばんだり、熱を持ったりしていませんか?
それは、心のエネルギーがうまく外へ発散できていないサインかもしれません。
そんなときは、冷やすのではなく「適度に温めてめぐらせる」ことが大切です。
たとえば、
寝る前に「神門(しんもん)」を親指で軽く押しながら、ゆっくりと呼吸する。
ふーっと吐くときに押す。
吸ういきで優しくゆるめる。
または日中、緊張や頑張りどきが続いたときに、
「大陵(だいりょう)」のあたりの手首を包みこむように手であたためる。
そんなふうに、自分の“入り口”に触れることで、
心に少しずつ余白が戻ってきます。
ヨガの中でも、チャイルドポーズや仰向けの休息ポーズで、
手首が床につく感覚を大切にすることで、
原穴にやさしい刺激が入り、心の奥がふっとほどける瞬間が訪れます。
原穴の集まる手首は、
まるで心とからだの“対話の場”のような存在。
これからやってくる夏のはじまりに向けて、
どうぞ自分の手にやさしくふれて、心の声に耳をすませてみてください。
あたたかく包みこむような手のひらの暖かさを手首に当てて、あたためて、
巡りがととのい、心の中心に静かな火が灯るように。
そのぬくもりは、暑さの中でもブレない、
あなた自身のリズムを守ってくれるはずです。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。