<仙骨 — 静かに、深く、わたしたちを支える場所>
仙骨は、背骨のいちばん下に位置し、
左右の腸骨とともに骨盤の後ろ側をつくる、逆三角形の骨です。
5つの仙椎が癒合してできており、見た目は小さくても、
上半身の重さを受け止め、地に伝える“土台”として、
からだの軸をしっかりと支えています。
その場所は、からだの真ん中にありながら、
どこか奥まった、静かな領域。
普段の生活ではあまり意識することのないこの骨に、
ヨガの動きや呼吸、触れるような意識でそっと近づくと、
不思議と心身が落ち着き、
安心感が生まれてくることがあります。
この内側の変化には、
仙骨の奥を通る仙髄神経(第2〜第4仙椎)の働きが関係しています。
仙髄とは、日常あまり聞きなれない言葉ですが、
仙骨内部を走る神経のうち、
第2〜第4仙椎から出る部分で、ここには副交感神経が含まれています。
この神経は、骨盤内の内臓や泌尿生殖器、会陰部などの働きとつながっていて、
仙骨まわりの緊張がゆるむと、からだの奥深くから安らぎが広がっていくのです。
仙骨はまた、背骨全体を支える基盤でもあります。
その傾きや位置が乱れると、背骨のライン全体が影響を受け、
肩こりや首の緊張、腰の不調にもつながりやすくなります。
だからこそヨガや整体、ボディワークでは、
仙骨のポジションや感覚を丁寧に観察し、
全身の調和と中心軸を取り戻していくプロセスがとても大切にされているのです。
そしてこの“仙骨”という名前には、どこか神秘的な響きがあります。
仙人のように、静かに、深く、世俗を離れて生きる存在。
まるで、山の奥で自然とともに暮らしながら、
わたしたちのいのちを静かに見守っているような…
そんな“仙”なる骨。
英語で「sacrum(サクラム)」と呼ばれるこの骨の語源も、
「sacred(神聖な)」という言葉に由来します。
古代では、「魂が宿る場所」「命の入り口」とされ、
特別な儀式にも用いられてきたといいます。
ヨガの伝統でも、この仙骨のあたりには
『第二チャクラ(スヴァディシュターナ)』があり、
創造性や感情、命の流れとつながるエネルギーの中心とされています。
さらにその奥には、
『クンダリーニ』と呼ばれるエネルギーが眠っているとされ、
わたしたちが本来持っている「目覚め」や「気づきの力」が、
ここから立ちのぼっていくと伝えられています。
仙骨は、ただの骨ではありません。
それは、「土台」であり、「通路」であり、「目覚めの入口」。
わたしたちの内側の静けさと力強さ、
両方に触れることのできる神聖な場所です。
ヨガの時間、骨盤を動かすときや、尾骨に意識を向ける瞬間、、、
ふと仙骨を感じる瞬間があったなら、
そこにいる“仙人”にそっと耳をすませるように、
やわらかく、ていねいに、その静けさに寄り添ってみてください。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。