<プレスポイントと身体の対話 – クリパルヨガの安定感- >
ヨガを練習する中で、
「今、自分がどのように立っているか」
「どこに力が入り、どこが抜けているか」に気づくことは、
実はとても奥深いテーマです。
その気づきを助けるものの一つに、
クリパルヨガでよく使われる『プレスポイント』と呼ばれるテクニックがあります。
プレスポイントとは、意識や力を向ける方向性の場所です。
ポーズの中、ある一定の位置に意識を向け、安定した中でポーズを維持する技術です。
シンプルに聞こえますが、この意識づけがあるかないかで、
アーサナの安定感や身体の使い方が大きく変わります。
興味深いのは、この考え方がクリパルヨガにおいて非常に基本的なものでありながら、
他のヨガの流派ではあまり聞かれない独自のアプローチであることです。
また、極端にいうと『プレスポイント』以外は
リラックスを目指すとも表現できます。
たとえば、タダーサナ(山のポーズ)。
ただ立つだけのポーズに見えますが、
自分の「立ち方」を探求すると、意外な発見があります。
私自身、8年前は極度の反り腰で、顎が上がり、
足元を見ても甲がほとんど見えない姿勢でした。
当時酷い腰痛があり、椎間板ヘルニア&脊椎側湾症という診断を受けていました。
(当時の経験が整体とセルフケアを自分自身がはじめたきっかけになっています。)
そんな状態からだんだんと痛みがなくなり生活は楽になりましたが、
身体は『そのままの癖』を抱えていました。
ですが、尾骨の使い方を何度も繰り返し実践することで、次第に立つ位置が明確になり、
ある日ふと「全体を使って立てている」と感じる瞬間が訪れました。
今現在では、無意識で「パッ」と立つ状態でも足の甲が見える立ち方に変わり、
以前よりも格段に「自分が安定して立っている」という感覚が肉体に存在します。
この変化は、「正しい形を覚えた」から起こったのではなく、
プレスポイントを意識し、動かし続けた結果として生まれたものです。
足裏が床にどう触れているか、どこに重心がかかっているか、
尾骨はどこにあるか、骨盤の位置は、、、
下腹部・臀部・骨盤底・脚の感覚・・・
「立つ」時のプレスポイントの方向性を繰り返し観察し、
調整することで、自然と身体全体の安定感が増していきました。
骨盤が前傾・後傾しやすい、
片側に重心を乗せやすい、肋骨が開く、閉じるなど、
私たちの身体にはさまざまな「くせ」があります。こうしたクセは、
無意識のうちに定着しているため、自分では気づきにくいものです。
しかし、プレスポイントを使いながら身体の感覚を探ることで、
そのクセが少しずつ浮かび上がってきます。
話し方のクセと同じように、
身体のクセも繰り返し意識することで変化していきます。
「また片側に重心が寄っているな」と気づいたら、
反対側の足裏を少し強く押してみる。
「あー肋骨が開いているな」と気づいたら、
もう少し尾骨を下げて、溝おちを下げてみる。
それだけで、いつもとは違う立ち方が生まれます。
「えーっと」と口癖を言っていることに気づいたら、次は言わない。
「脚を組んでいる」と気づいたら、おろして揃える。
おなじです。
クリパルヨガ以外のヨガクラスでもすることも勿論含んでいるので、
『より繊細に細かく「からだ」を扱っている』という表現が
今まで私自身がクリパルヨガ以外のいろんなヨガに触れてきて感じる印象です。
皆さんはどう感じますか?
・ ・ ・
この小さな気づきの積み重ねが、長い目で見ると大きな変化につながります。
『プレスポイント』の面白さは、単に「身体を整えるためのテクニック」ではなく、
「意識を向けることで、より自分を深く観察できる」点にあります。
だからこそ、クリパルヨガではこの『プレスポイント』を基礎の基本として、
さまざまなアーサナに応用していきます。
対面クラスでは、講師がそっと手を添えて「ここを意識してみて」と
アシストをすることもありますが、
実はこのプレスポイントのテクニックはオンラインと非常に相性が良いものです。
動いている「自分自身」が感覚を研ぎ澄ませ、
内側の気づきを深めることができます。
自分で動くから、良いのです。
主体性がそこに生まれやすい、それは内観にも繋がります。
主体性を持って動くことは、単に身体を操作する以上の意味を持ちます。
それは、自分自身の身体と心に対する責任を持つことを意味します。
自分の動きや呼吸に対して意識的であり、
どこに力を入れ、どこにリラックスを感じるかを自身で探求することは、
自己観察の最も基本的な方法です。
先週末に行った「ボディースキャン」も自分で意識を向ける根本的には同じ方法です。
https://yogato.jp/<春こそ「お休みすること」の大切さ~ボディス/
からだが安定しているからこそ、私たちは内観しやすくなります。
ぐらついているときや、力んでいるときは、
どうしても外側のバランスを取ることに意識が向いてしまい、
自分の内側に集中する余裕がありません。
だからこそ、プレスポイントを通じて安定感を育むことは、
クリパルヨガが大切にする「自己探求」につながっていきます。
足裏の感覚を深めることや、安定したポーズの在り方が、
心の落ち着きや思考のクリアさにも影響してくるのです。
また、ソワソワする、落ち着きがない、頭痛が起きやすい、といった場合にも、
骨盤から調整するこのプレスポイントを活用した山のポーズの練習を繰り返すことで、
背骨・骨盤の形が整い、足元へのエネルギーも安定して巡ります。
その結果、上部へのエネルギー過剰によって起きると考えられる不調が
整う可能性が非常に高いのです。
プレスポイントは、単なる身体操作のテクニックではなく、
自分自身と対話するための入り口です。
安定した土台があるからこそ、安心して内側を探ることができる。
その安定感を作るプロセスこそが、ヨガの実践なのかもしれません。
日々のプラクティスの中で、ふと
「今、私はどのように立っているだろう?」と問いかけてみてください。
足裏や頭頂の感覚に注意を向けるだけで、
これまで気づかなかったことが見えてくるかもしれません。
そして、その小さな気づきの積み重ねが、
やがて大きな変化へとつながっていくはずです。
YOGATOでは「クリパルヨガ」「セルフケア」に加え、
「ベーシック(基本)」を大切にしています。基礎を丁寧に実践し、
身体の感覚を研ぎ澄ませながら、自分自身と対話する時間を大切にしています。
その時間が日常の中に自然と溶け込み、
きっと心地よい変化をもたらしてくれると信じています。
どうぞ深い呼吸と共に続けてみて下さい。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。