<きそきそよーが – からだの記憶(マッスルメモリー)を整えるということ>

きそきそよーがの中でも、とても大切にしているのが
山のポーズ(タダ・アーサナ)です。

山のポーズは、一見するとただ立っているだけの姿勢。
ですが、からだの前後・左右・上下というすべての軸が
もっとも素直にあらわれる“基礎のアーサナ”です。

この土台が整っていくと、
ほかのどんなアーサナも、
日常の姿勢さえも、静かに安定していきます。

そして、この基礎を育てていくうえで大切なのが、
「からだの記憶」という視点です。
からだには、繰り返した動き方や姿勢を保存していく
“マッスルメモリー(筋肉・筋膜・神経系の記憶)”があると言われています。

では、このマッスルメモリーとは何でしょうか。
”マッスルメモリー”とは、筋肉そのものが記憶しているというよりも、
筋膜や神経系が「どんな動き方を自分の標準としているか」を
無意識のうちに学習していく仕組みのことです。

たとえば、毎日の姿勢の癖、足の踏み方、重心のかけ方、
からだのどこから動き始めるかといった“使い方の傾向”が知らず知らず積み重なり、
そのまま私たちの“当たり前”になっていきます。

全身バランスの取れた使い方が続けば、それは安定した動きへと育ち、
偏った使い方が続けば、その癖がそのまま再現されます。
メモリー機能としての「良い・悪い」ではなく、
ただ“今のからだが学んできた歴史”としてそこに残っていくものなのですね。

この後者の「偏った使い方視点」はあまり語られませんが、
ヨガを学びを深めていく中で、

私は子ども時代の体験から、この部分にとても興味を持ちました。

私は小さな頃から外でも比較的、遊んでいたし運動の部活もしていたし、
体力作りのために水泳も通わされていました。
俊敏さとすばしっこさはありましたが、
からだの使い方が噛み合わず、センスがイマイチ。
すぐ息が上がって疲れてしまうタイプでした。

水泳では、バタ足をしても脚が沈んでしまい、なかなか前へ進めない。速くならない。
中学生時代のバスケットボール部では体力がやはり続かず、長時間の練習中に脱落も。
帰ったら宿題をして寝るだけで、塾に通う余力なんてとてもありません。

(今思えば、夏場の“4時間練習”はなかなかクレイジーでしたね……)


毎日が精一杯でした。



そんな私の噛み合わないまま刻まれたメモリーは、
大人になってからもそのまま残り、
腰痛や内臓の不調の“根っこ”につながっていきました。


けれど、からだはなんだかんだ言って、

とてもやさしく良く出来ているのです。

使い方は、いつからでもインストールをやり直すことができます。

書き換え可能なのです。



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きそきそよーがの“後屈”では、その変化がとてもはっきりあらわれます。

後屈は「骨盤の初動」が入るかどうかで、

背骨の連動も呼吸の広がりも
驚くほど違ってくるアーサナです。


上体や胸をあげ広げようとする前に、
まず骨盤を後傾の方向へわずかに傾け、
恥骨(プレスポイント)で床を“押す”ところから丁寧に動かす。
その小さな後傾の初動が、
下半身から全身へとバランスよく目覚めていく流れをつくっていきます。


もしその初動が入っていなければ、ただ“癖として加えてあげる”だけでいいのです。
なかなか出来ない場合もあります。仙骨や腰回りが硬いとやはり難しい。
そんな時は骨盤の微細な動きを繰り返すだけで十分。
仙骨をまずは触れて揺らすだけでもいいのです。
ミリ単位でも、からだは確かに受け取り、静かに新しいメモリーを育てていきます。


そして、側屈にも同じことがいえます。
側屈は見た目の角度よりも、土台の安定が何より大切です。

側屈の角度の深さに意識が向きがちですが、
軸が感じられない方や、腰が反りやすい方や、腰痛のある方ほど、
本当に見るべきは“中心がそこに働きつづけているかどうか”。

体側が伸びていく途中でも、

両足裏で床を押す感覚がずっと残っているか。

骨盤が前後に流れず、自分の真ん中に静かに立ち続けていられるか。
この土台があると、脊柱に余計な負担がかからずに体側がのびやかに広がります。
そしてそこに山のポーズと変わらぬ前夜位のバランスがいきていると、

その広がりの中でも、脊柱を通るプラーナの道——
スシュムナーナディの巡りは活かされたまま保たれていきます。
側屈とは、“広がりながらも中心に立ち続ける”という”繊細なエッジの探究”なのです。


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山のポーズや側屈で感じた
足裏の安定、骨盤の安定感、微細な調整。
そのひとつひとつが、からだの新しいメモリーとして刻まれていきます。

特別なことではなく、
何度も繰り返すことでメモリーは書き換えられる。
だからこそ、日々繰り返すのです。

今日も最後までお読みくださり、ありがとうございます。