<『エッジの探究』──クリパルヨガの本質にふれる時間>
朝晩や数日の違いで寒暖差があったり、変化の目まぐるしい春の日々。
ぽかぽか陽気に心がほどける日もあれば、
急な冷え込みに身を縮めてしまう日もあります。
気づかないうちに、私たちのからだや心は、
そうした季節の移ろいに深く影響を受けています。
眠りが浅くなったり、集中できなかったり、
理由のわからない疲れがじわっと溜まっていたり。
そんな“なんとなく落ち着かない感じ”こそ、
今この瞬間に耳をすませるサインかもしれません。
クリパルヨガの実践では、
こうした日々のゆらぎにやさしく気づき、
「今、私はどんな状態なのか?」を観察するところから始まります。
その観察の中で、とても大切にされているのが
「エッジの探究」という考え方です。
「エッジ」とは、自分のからだの柔軟性や筋力の限界点、
心が自然と集中する状態のこと。
甘えるわけではないけれど、無理をするのでもなく、
プレスポイントの方向性を使って丁寧にからだを扱い、
その中で“安らげるギリギリの場所”を見つけていくような感覚です。
もともと「エッジ」という言葉は、心理学の分野で使われていました。
この概念をヨガの実践に取り入れたのは、
クリパルヨガの指導者であり、フェニックス・ライジング・ヨガセラピーの
創始者でもあるマイケル・リー師です。
からだに無理を強いることなく、惰性に流れることもない。
甘えているわけではない。
プレスポイントを丁寧に活かしながら、最大限自分を大切に扱い、
今この瞬間にふさわしい“安らげる場所”を見つけていく。
この見つけていく工程が、「エッジの探究」です。
これは、単なるポーズの完成度を目指すのではなく、
そのポーズの中で「自分にとっての今の真実」にふれるという体験です。
エッジは、痛みの手前であり、逃げたくなる手前の境界線。
そこに留まって、呼吸しながら『今ここ』を感じる、、、
まさに、自己観察可能な「生きた感覚」が宿る場所なのです。
「エッジ」は毎回同じではありません。
天気や気温、気分や体調……そのすべての影響を受けて、
毎回違う場所にあります。
同じポーズであっても、毎回繊細に毎回違う。
春のように揺れ動く季節には、
特にその変化を敏感に感じ取ることができるでしょう。
だからこそ、クリパルヨガではポーズの中で
「今の私のエッジを探ること」がとても大切にされています。
これが『エッジの探究』です。
ゆらぎの感じる日は、ポーズの中でじっと静かにとどまりながら、
内側を観る探究が合っているかもしれません。
またある日は、呼吸と動きをつなぎながら変化に身をただ委ね、
その流れの中でエッジを感じる方が自然な日もあるでしょう。
クラスの内容──たとえばモデレート(中程度)かジェントル(優しい)か、
その日の運動強度や進行によっても、
「エッジの探究」の味わいは変化します。
違いを感じながら、そのときの自分に合う探究を楽しんでみてください。
マットの上で感じるエッジの体験は、
私たちの日常にも深くつながっています。
たとえば、人との関わりの中で、
「ここまでは頑張れるけど、これ以上は無理かも」と感じたとき、
自分の限界を知って尊重すること。
あるいは、少しだけ勇気を出して一歩を踏み出すときの、
その“手前”での揺らぎ。
そんな日常の場面で、ヨガでのエッジの体験が
ヒントや支えになってくれることがあります。
自分の内なる声に耳を傾け、今の自分にやさしく気づく。
そこから、自分の力で選び、整えていく。
そんな自己観察の力が、クリパルヨガを通じて少しずつ育っていきます。
エッジでの体験は人それぞれです。自分だけのもの。
ポーズの中で大きな気づきを得る人もいれば、
ただ静かに「今ここにいる」感覚に安らぐ人もいる。
どちらも、自分と深くつながる貴重なプロセスです。
「できる・できない」ではなく、「気づいているかどうか」。
そこにフォーカスするのが、クリパルヨガのあたたかさであり、
奥深さでもあります。
春という、変化とゆらぎの季節だからこそ──
ヨガのマットの上で、日常の延長線上にある
“自分だけのエッジ”にふれてみませんか?
・ ・ ・
楽しみながら『エッジの探究』を重ねていくことで、
日々の暮らしの中にも、少しずつ穏やかな自己信頼が芽生えていきます。
どんな瞬間も、「今の私」にやさしく誠実に向き合う。
その在り方こそが、クリパルヨガのエッセンスです。
・ ・ ・
私たちは日々、さまざまな立場で過ごしています。
家族の一員として、
職場での役割を担う存在として、、
でも、ヨガの時間は、そうした肩書きや役割から少し離れて、
ただ「自分」として在ることを思い出すひととき。
ただそのままの自分でいること。
その感覚を、マットの上で丁寧に思い出していきましょう。
大切にしたい軸をそっと再確認するような、
そんな静かで確かな時間になりますように。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。