<ウルドヴァナーヴァアーサナ(船のポーズ)の実践と内観>

<ウルドヴァナーヴァアーサナ(船のポーズ)の実践と内観>



「ウルドヴァ ナーヴァ アーサナ(船のポーズ)」は、

静けさの中に芯の強さを育てる時間です。

けれど同じ“船”でも、からだの使い方次第で体験はまったく別物になります。

今日は、リラックスした状態の船と、全身が参加する船の違いを、

実践と内観の視点からほどいていきます。

まずは、リラックスした船。

尾骨を膝を少し曲げ、腰は伸びているけどお腹はそこまで使っていない状態・・・

ただバランスをとるだけでも船の形は作れます。

お腹はうっすら働いているようで、実は最小限。

これが“手を抜ける船”。

疲れている日には、休息の入り口として意味を持つこともありますが、

「安定しているつもり」で内側が散漫になりやすいのも事実です。

ここから、全身が参加する船へ。

ポイントは「微かに坐骨の後ろ側で床を押す」感覚です。

マットに触れる坐骨のやや後方でそっと押し返すと、大臀筋がちゃんと参加し、

骨盤の底に静かな支えが生まれます。

同時に踵を前へ送り、腿の骨を股関節へやさしく差し込む意識を添えると、

下腹の奥が静かに目を覚まし、背骨が自然に伸びます。

胸を張ろうとせず、肋骨の余分な力を抜いて、首まわりは長く。

肩甲骨は背中で横に広がり、呼吸は底に落ち着いていきます。

形は似ていても、土台からの“押す”が通るだけで、からだ全体の連携が始まり、

内側の静けさはより深く、強く、安定します。

この違いは、パシュチモッターナ アーサナ(長座前屈)でも同じです。

リラックスしてただ前に倒れる前屈と、

踵で前を押し、太腿の根を床へ預け、坐骨を広げる意識で入る前屈。

どちらも外見は似ていても、内側の世界は全く別の景色が広がります。

船もまた、形の完成ではなく、どこから力が伝わり、

どこが休めるのかという関係性が”本質”を決めます。

ここで大切にしたいことを添えます。

“手を抜ける船”も“リラックスの長座前屈”も、

使わないという選択にも意図があります。

各々に良さが存在しています。

クリパルヨガの実践としてはプレスポイントの活用を積極的に行いますが、

自分自身がそれを今は求めていないと感じるときは、

『全身を使わないという選択』もやさしく受け取ってください。

選択そのものが、今の自分を尊重する行為です。

・    ・    ・

クリパルヨガでは、ヨガのポーズ形よりも“過程の体験”を大切にします。

その体験を深めてくれるのが「プレスポイント」を使った全身を使うポーズです。

今日の練習では、あえて上で解説した『二つの船』を試してみました。

最初にリラックスした船、

次に坐骨の後ろ側で床を押すプレスポイントを見つけ、全身が参加する船へ。


そのとき自分に問いかけます。

 今、背骨や腰は伸びている? 

 お腹も大臀筋も静かに参加している? 

 お腹の奥は固めず、呼吸は流れている? 

 全身が程よく使われている?

もし呼吸が浅くなったら、少し膝を曲げてみる。

踵を遠くに送り続けるのが難しければ、

足先の力をゆるめ、坐骨からの押しをもう一度やさしく探る。

小さな調整のたびに、内側の雑音が減り、安定の層が一枚ずつ重なっていきます。

これが『エッジの探求』であり、「エッジ」にとどまる感覚。

頑張りすぎず、緩めすぎず、今の自分が呼吸できるちょうど良さを保つ境目です。

・    ・    ・

選ぶ自由は、あなたにあります。

今日は休息のための船でもいい。

明日は芯から安定する船を漕いでみるのもいい。どちらも、自分を大切に扱う選択です。

大切なのは、何を選んだかではなく、

どう気づき、どう味わったか。

その丁寧さが、日常の姿勢や呼吸にも静かな余韻を残します。

からだを通して心が整う瞬間は、いつもささやかに訪れます。

船の中で出会うその静けさを、急がず、やさしく見守ってみてください。

今日も一緒に練習できたことに感謝を込めて。

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

※補足です。

クリパルヨガでは一般的ハタヨガで

「ナーヴァ アーサナ(船のポーズ)」と呼ばれるアーサナを

「ウルドヴァ ナーヴァ アーサナ」と呼びます。

ウルドヴァ・・・上を見る船のポーズという形を表現していますね。