<前屈の本質は股関節の屈曲 – 二つの前屈と腰痛ケア>

<前屈の本質は股関節の屈曲 – 二つの前屈と腰痛ケア>

前屈は、腰や背骨を無理に折る動作ではありません。

その本質は「股関節の屈曲」です。

股関節という大きな蝶番を軸に、

腿裏やお尻、お腹、背中の筋肉が連動して動くと、

腰は守られつつ、サポート側に回ります。

ところが股関節が十分に使えないまま背中が丸くなり「腰から」折ろうとすると、

腰椎に負担が集中し、腰痛へとつながります。

「腰が悪い」のではなく、「腰以外の部分が休んでいる」状態です。

その結果、腰が働きすぎてしまうのです。

●二つの前屈の質

前屈には大きく分けて二つの質があります。

ひとつは リラックスした前屈
重力に身を委ね、余計な力を手放すことで、

副交感神経が優位になり、心身を落ち着けてくれます。

もうひとつは 全身を使った前屈。(きそきそよーがの相反抑制を活かす前屈はこちらです。)

股関節を軸に、お腹・背中・腿裏・お尻までが協力し、力を分散させながら動きます。

このとき大切なのは「全身を使っている=全身に力を入れる」ではないということ。

腰から胸、首や肩までが自然に伸びていれば、上半身は呼吸によってリラックスできます。

全身で支えつつも、一部に過緊張があるわけではありません。

もし「腰だけ」「腿裏だけ」など、一部が極端にしんどいと感じるなら、

それはバランスが崩れているサイン。

とてもいい気づきになるので、見直しのきっかけにしてみてください。

●使い分けガイド

リラックスした前屈がおすすめのとき

・眠る前や一日の終わり

・緊張が強く落ち着かないとき

・呼吸が浅く感じるとき

・からだの疲れを回復させたいとき

→ 重力に委ねて、からだをゆるめることが目的。

クッションやヨガのボルスターに上体を預けたり、

膝裏にブランケットやタオルを丸めて置いたりして、居心地のいい状態を作ってみてください。

支えがあることで安心感が増し、より深いリラックスに入ることができます。

このような前屈は、リストラティブヨガやマタニティヨガでも多用されるスタイルです。

また、陰ヨガの前屈は指導者の意図によって「完全にリラックスさせる」場合もあれば、

「全身を使って支えを感じさせる」場合もあります。

一概には言えませんが、共通しているのはホールドに入ったら

「内観」「内側の感覚に身を委ねること」 が核心にある、という点です。

全身を使った前屈がおすすめのとき


・「陽」のヨガ、動くヨガ、次の動きがそこにあるとき

・腰痛や背中のこわばりを和らげたいとき

・股関節やお腹の支えを育てたいとき

・朝や日中にからだを目覚めさせたいとき

・姿勢を整え、安定感を取り戻したいとき

→ 股関節を軸に、全身で協力して前屈する。

胸・首・肩が楽であるかをチェックポイントに。

肩・肩甲骨をぐっと下げると、背面の脊柱起立筋も使いやすくなります。

・    ・    ・

リラックスだけでは支えや軸が育たず、

全身を使うことに慣れていないうちは偏り、過緊張にもなりやすいものです。

両方を状況に応じて選びながら、

「どこが頑張りすぎているか」「どこを休ませてもいいか」を観察することが、

腰痛を和らげる大切な学びになります。

前屈というシンプルな動作は、

自分の癖を知る入口であり、全身の協力を取り戻す練習です。

その気づきを積み重ねることで、腰は休まり、からだ全体が安心して動けるようになります。

腰に痛みを感じやすい方は、

立位の前屈であれば膝を曲げて「優しさ」と共に取り組んでみてください。

膝を曲げる動きは股関節の屈曲を『深めている』という視点に切り替えること。

そして床を押し下げる意識を続けてください。

特に、そこから上体を起こすときほど「床を押し下げる」を忘れない。

お腹も使い、背面(腰・背中・腿裏)を頑張らせすぎないように。

(これは犬のポーズでも同様です。)

こうした工夫だけで、腰痛が消える方も多くいらっしゃいます。

ちょっとしたこと、、でも実は重要なんですね。

今日も最後まで、ありがとうございます。