<ウルドヴァ・ナーヴァアーサナに戻る——“押す力”から“みる力”へ>
8月のコラムで取り上げた、
〈ウルドヴァ・ナーヴァアーサナ(船のポーズ)の実践と内観〉。
あのときは、踵を押し出すことで体幹が安定するーー
そんなプレスポイントの話をメインにしていました。
今日のクラスでも、久しぶりにこのポーズに戻りました。
けれど今回は、その「押し出す」という言葉を
あえてサラッとしか伝えしていません。違い、今日の自分はどちらを求めているのか、
感じてから・・・途中に選択していただく形にしています。
はじめに行った船のポーズ(手を付いた状態)と、最後にもう一度行った船のポーズ。
同じ形なのに、体験はまったく同じではありません。
呼吸の深さ、背骨の柔らかさ、心の静けさ——
そのときの“今”によって、感じる世界が変わります。
この“違いをみる”という体験そのものが、
ヨガの本質のひとつなのかもしれません。
同じアーサナをくり返すこと。セルフケア整体でも、瞑想でも、同じだと思うのです。
一瞬一瞬のからだや呼吸の変化を、ただ観てみる。
それは「正しくできているか」を確かめるのではなく、
“今の自分を感じ取る”ための練習です。
踵を押すことも、待つことも、委ねることも、すべては“観る力”を育てる入口。
押し出した踵の先から、背骨に小さな波が生まれ、
その安定がやがて静けさへと変わっていく。
くり返すたびに、その安定の波のリズムや自分の呼吸が少しずつ見えてきます。
ヨガの時間は、からだを整えるためだけではなく、
変化を見守る感覚を磨くための時間でもあります。
その“みる力”が日常にも広がると、
呼吸や気分、心の動きまでもやさしく見つめられるようになる。
今日の船のポーズも、そんな時間の共有でした。
最初に入ったときよりも、
どこか穏やかで、呼吸が深くなっていたなら——
それは、押す力が「感じる力」に変わっていた証かもしれません。
同じポーズに戻ること。
それは、同じ自分に戻ることではなく、
新しく出会い直すこと。
変わることよりも、
その変化を“みている”自分がいること。
そこに、静かな強さが育っていくのだと思います。
何度も繰り返して参りましょう。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
