20250206
<チッタとプラーナ>
●チッタ
「チッタ」とは、サンスクリット語で「心」や「意識」を意味する言葉です。
思考や感情、記憶、知覚といった、私たちの心の働きすべてを含んでいます。
チッタは常に動き続けており、
その波立ちをヨガ哲学では「チッタ・ヴリッティ」と呼びます。
心がざわめき、不安や執着にとらわれていると、
今この瞬間に集中するのが難しくなります。
ヨガ哲学の最も有名な古典「ヨガ・スートラ」では、
「ヨガとはチッタ・ヴリッティを鎮めることだ。」※
(Yogaś citta-vṛtti-nirodhaḥ)
(※日本語では「心の作用を死滅する」と訳されることが多いですが、
私の感覚では「鎮める」「波が穏やかに」「静かに」——最後は「凪」となる。
そのようなイメージです。そんな感覚を込めて、「鎮める」と表現しました。)
クリパルヨガでは、このチッタの動きを観察し、
静めることを大切にします。
たとえば、ヨガのポーズをとっているときに、
ふと「うまくできているかな?」と考えたり、
「今日は疲れているな」と感じたりすることがあります。
そんなときは、それらの思考や感情を無理に追い払おうとせず、
ただ気づき、そっと見守ることが大切です。
呼吸や身体の感覚に意識を向けることで、
心の波立ちは自然と穏やかになっていきます。
クリパルヨガにおいては、チッタを鎮めると同時に、
まずはチッタの「見たい」「知りたい」といった、
常に動き続ける性質を活かし、『観察する』ことを大切にします。
そして、プラーナが動き出したら、そのチッタを手放していくのです。
●プラーナ
一方、「プラーナ」は「生命エネルギー」を意味し、
私たちの心とからだを動かす源となるエネルギーです。
呼吸を通じて取り込まれ、体内を巡り、活力を生み出します。
ヨガでは、呼吸と動きを連動させることで、
プラーナの流れを整え、心身の調和を深めていきます。
たとえば、腹式呼吸をゆっくり行うと、心が落ち着き、
プラーナが満ちてくるのを感じることができます。
また、ヨガポーズをとりながら
「身体の中に生まれる温かさ」や「心地よい伸び」を感じることで、
プラーナの流れを実感することができるでしょう。
チッタとプラーナは深く結びついています。
心が落ち着いていると、呼吸は自然と深くなり、
エネルギーの巡りもスムーズになります。
反対に、心が乱れていると、呼吸は浅くなり、
プラーナの流れも滞りがちです。
だからこそ、呼吸を整えることで心を安定させ、
心の観察を通してプラーナの巡りを良くしていくことが大切なのです。
・ ・ ・
クリパルヨガでは、まず呼吸と身体感覚に意識を向け、
「チッタ」の動きを観察します。
次に、内側のエネルギーを感じながら、
「プラーナ」を高めるポーズや動きを行います。
そして最後に、心とからだがひとつに溶け合う感覚を味わい、
深いリラクゼーションへと導かれていきます。
『チッタとプラーナ』を整える習慣を続けることで、心と身体の調和が生まれ、
日常の中でも落ち着きや活力を感じられるようになるでしょう。
ヨガの練習を通じて、
自分の内側の静けさとエネルギーの流れを大切にしていきたいですね。
最後に、
この「チッタ」は集中するのも得意です。
見たいんです。子どものように興味津々なんです。
だからこそ、ポーズのはじまりで「プレスポイント」を
「チッタ」の要素として活かし、プラーナが流れやすく、
全体のバランスが整った状態へとポーズを導いていきます。
この流れを知ると、
「クリパルヨガにおけるポーズは内観のツールである」
という説明が、すっと腑に落ちるように感じます。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。